糖尿病の検査・治療
糖尿病は人間の「食べるという本能」に深く関係し、マイカー・エスカレーター・エレベーターの普及という「歩かなくてすむ」時代的背景も関係し、更に当初は「痛くも痒くもない」という発見・治療の難しい疾患です。治療が十分でないと、その病魔は次第に忍び寄り、気がついた時には心筋梗塞、脳卒中、腎不全(透析)、失明、壊疽による足の切断など、それはそれは怖い怖い病気です。
とはいえ、現在は様々な治療が可能となり、しっかりとした治療を行えば「怖くない」病気になってきたといえるでしょう。
まず診断しましょう
「隠れ糖尿病」と言われるように、空腹時の血糖だけでは診断ができないことがあります。また、1~2ヶ月前の血糖の平均値を表すグリコヘモグロビン(HbA1c)が正常でも、糖尿病の場合があります。
このような場合、どうしたら診断できるのでしょう。食後血糖高値、中性脂肪高値、体重増加など、糖の異常が疑われたら「糖負荷試験」をお勧めします。
75gの糖を飲んでいただき、空腹時、30分後、60分後、120分後と4回血糖と血中インスリンを測定します。その値によって「正常型」「糖尿病型」その間が「境界型」と診断します。
インスリン(血糖を下げる膵臓のホルモン)分泌が遅れるにも拘らず、だらだらと増え続けている患者様が多く見受けられます。
これが、インスリンの効きが悪くなり血糖を下げられなくなった状態「インスリン抵抗性」です。この時点で生活習慣を修正しますと、まだ間に合うことが多いのです。この時点で早期に診断・治療することが私たちの願いです。
解説
右の症例は、ほぼ正常な左に比べ、インスリン(黒線)の分泌のピークが遅れているばかりではなく、その量もはるかに増加しています。インスリンの効きが悪くなっているので、その分、分泌量を増やして代償しているわけです。その代償機能が破綻しますと、血糖が上昇します。
このステージを過ぎますと、空腹時の血糖、あるいは随時血糖だけでも診断が容易になってしまいます。
最初からインスリン治療が必要な1型糖尿病はこの限りではありません。
治療について
現在、糖尿病を含めた栄養学の分野にエポックメイキングな大改革が起きつつあります。いや、起きています。それまでの常識が、今の非常識になっています。それをいち早く認めたのが米国の糖尿病学会でした。
糖尿病の食事療法というと、いわゆる「カロリー制限食」でしたが、炭水化物、脂質、タンパク質全てが制限され、継続することは辛く、耐える治療であるために中断率が高く、リバウンドすることも少なくありませんでした。
ところが、最近の研究ではこの食事療法が成功し減量はできたものの、心臓病は減少せず、逆に骨密度が減って寝たきりのリスクが高まったという結果でした。
血糖を上昇させるのは糖質(炭水化物から食物繊維を差し引いたもの)ですので、これを減らした「糖質制限食」の研究が蓄積されました。すると驚くような結果が出てきたのです。
2008年「カロリー無制限の糖質制限食が最も肥満者の減量効果に優れ、最も糖尿病患者の血糖管理を良くしていた」という論文が発表されました。
2013年アメリカ糖尿病学会は、糖尿病治療の第一選択肢として「糖質制限食」を無条件で認めています。
弊院でも、2015年より北里研究所病院糖尿病センター長 山田 悟先生が提唱される「緩やかな糖質制限食」を導入し、明らかな治療効果を認めています。
糖尿病に対し、薬物、インスリン治療も行いますが、しっかり食事運動療法を行い、それらを減らしたり、可能であれば中止できるのが一番です(困難な場合があります)。