睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは
無呼吸状態とは、呼吸が10秒以上止まっていることを指し、この状態が7時間に30回以上、あるいは1時間あたり5回以上ある場合、これを睡眠時無呼吸症候群と呼びます。
この状態が繰り返されると、体に取り込まれる酸素の量が少なくなってさまざまな臓器に障害をもたらす上に、日中に眠くなり活動が低下するなど、社会生活にも影響を及ぼすようになります。2002年2月に起こった山陽新幹線の列車緊急停止事故は運転士が眠ったまま270km/hで走り続けたからで、この原因は睡眠時無呼吸症候群でした。
それだけではありません。糖尿病や高血圧、更には脳卒中や虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、などの重篤な疾患を引き起こす事が明らかになってきました。
日中の眠気、やる気が低下し、失敗も増え「うつ病」と誤診され、抗うつ薬の治療を受けていたケースもあります。
放っておくと生命に関わる場合もあり、診断・治療が大事です。
睡眠時無呼吸症候群の検査
終夜ポリグラフィー( PSG : polysomnography )
一晩入院して、脳波、心電図、胸腹部の動き、鼻からの気流、血液の酸素飽和度を連続して計測して診断します。
簡易検査
簡単な機器を自宅に持ち帰って頂き、就寝前に下記の図の様に装着して頂きます。翌朝目が覚めたら取り外して終了です。当院ではこの検査が可能です。
睡眠時無呼吸症候群の治療
肥満がある場合は、先ず減量です。
マウスピース
軽症な場合に有効です。下あごが数mm前に突き出す様にするものです。これにより喉の狭窄・閉塞を防ぎ、低呼吸・無呼吸を改善します。健康保険が適応され、歯科で作って頂きます。
CPAP(持続陽圧呼吸療法)
分かりづらい名称ですが、睡眠中に鼻マスクを装着して、一定の圧の空気を送り、弛んだ喉の閉塞・狭窄を防ぐ方法です。
有効性が高く安全・確実です。最初は違和感がありますが、早い方は1週間で慣れ、睡眠の質が向上します。
実際の症例
奥様に寝ている時にいびきが大きいこと、呼吸が止まっていることを指摘され受診されました。検査の結果、重症の睡眠時無呼吸症候群と診断され、CPAPを導入しました。
治療を開始しますと、「それまで電車の中では寝ていたが、CPAP導入後は本を読む余裕がある」とのことでした。
その患者様の承諾を得て無呼吸の波形を提示します。
赤い部分が「無呼吸:呼吸が止まっている部分」です。その周囲は呼吸の波形で、その下の気管音はいわゆるいびきです。
黄色い部分は、無呼吸の為に血液の酸素が低下している部分です。
この患者様の平常の酸素飽和度は98%ですが、低下時には47%まで落ちていました。これは、酸素投与が必要な低さです。