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総合内科とは

最近、総合内科と言う言葉をよく耳にするようになりましたが、どのような科なのでしょうか。私の出会いを基に、解説させていただきます。

私が「総合内科」と出会ったのは、以前勤務していた済生会宇都宮病院にて、エイズの講演会の司会を仰せつかった時のことでした。

講師はカリフォルニア大学サンフランシスコ校(以後UCSF)の准教授Michel Feldman先生でしたが、肩書きにgeneral internal Medicine(GIM:総合内科)と書いてありました。どういう科なのか伺いましたところ、例えば循環器科、血液内科等と同様に一つの専門科である事を熱く説明されました。

もともと私は一般内科を担当していましたが、それまでその専門性を考えたことがありませんでしたので、ぜひ自分の目で「総合内科」なる専門科を見てみたくなりました。

その後、何度かメールをやり取りし、2000年1~2月にUCSFで研修する機会を得ました。そこで「見て、聞いて、感じた」「総合内科とはなにか」を説明させていただきます。

一言で言ってしまいますと、成人に対して内科的プライマリーケア(primary care)を行うのが総合内科であり、子供から老人までを対象に、それこそ、ゆりかごから墓場までのプライマリーケアを行うのが家庭医学(family medicine)と考えて良さそうです。

そうなるとプライマリーケアとはなにかということになってきます。残念ながら、まだ本邦では十分に理解されていないばかりか、時には誤解されていることもあります。特に「一次医療」と混同されることが多いようです。

Dr.FeldmanはPrimary care のprimary はimportant(重要)という意味であるとおっしゃっていたのが、とても印象的でした。彼に紹介していただいた「Primary Care Medicine 3rd Ed.」にその定義が説明されていますので紹介させていただきます。

「プライマリーケアとは調和のとれた包括的な個人のケアであり、初めて接する場合にも、継続的な場合にも共に有用である。これはいくつかの作業から成り立っている:1)医学的診断と治療、2)心理・精神的評価と管理、3)病気のあらゆるステージにある、様々な背景を有する個人の支援、4)病気の診断、治療、予防、予後などの情報を十分に伝えること、5)早期発見、教育、生活習慣の変更、予防的治療を通して、病気や障害発症を予防すること、6)そして健康を維持すること、であり、これらがプライマリーケアを行う医師の仕事である。」

日本プライマリ・ケア連合学会のホームページにも解説が載っていますので、参考にして下さい。

ここでいう内容は多岐にわたりますが、まずはコミュニケーション技術が重要です。例えば、患者様が心を開かない時点では単に頭痛としか訴えなくても、訴えをゆっくり聞きますと(いわゆるオープンクエスチョン)、頭痛の背景に例えば会社の倒産があり、不眠やうつ状態が関与していることや、時には「嫁姑関係の破綻」など、様々な原因を涙ながらに話はじめることなどは、日常診療ではよく経験することです。

逆に、コミュニケートが十分にとれず、信頼関係が形成されませんと、上手くいきません。私自身の反省でもありますが、ある40代肥満男性が2次健診で来院された時のことです。ヘビースモーカー、べらぼうな高脂血症、高血圧、高尿酸血症、心電図異常等々心血管病のリスクの塊のような方でした。私がお会いした時には、健診の後、散々叱られ、意気消沈していましたので、内科的なリスクを軽く説明するだけに留めたのですが、次の予約の日には来院されませんでした。私たち医師の論理を押しつけるだけに終始し、患者様の心のレベルを十分に理解する配慮に欠けていたのではなかったかと反省させられます。

つまり、プライマリーケアとは患者様に対し、人間として接し、十分なコミュニケーションにより何を求めているのか、何を訴えたいのか、その背景にはどのような社会的、心理・精神的背景があるのかを確認し、医学的診断をして、その結果と、どのような治療が望ましいのか等を、十分に説明・納得していただくことかと考えています。

また、経済的問題、施設入所等の必要がある場合には福祉関係等に相談し、申請により減額が可能なものは書類を書き、入所が望ましい場合には紹介状を書くという作業もプライマリーケアの一部です。患者様に必要なありとあらゆる社会資源を利用する努力も要求されます。

さて米国の実情ですが、総合内科の回診・カンファレンスなどを共にしますと、かなり幅の広い内科的疾患を対象にしていますが、単科専門と明らかな一線を引いています。例えば、肺炎は総合内科で診るが、BOOP(器質化肺炎)は呼吸器専門医に任せると言っていたのが印象的です。

UCSFでは明らかな他科専門疾患でなければ、入院患者は総合内科医が主治医となり、様々な科の専門医にコンサルトしながら診療を進めることが多くみられました。胸部単純レントゲンでも放射線科医に確認してもらいその読影の質を確保します。

高齢者が食事を開始する際には、ST(speech therapist:言語療法士)に依頼し嚥下能力を評価してもらいます。

栄養に関してはNST(nutrition support team:栄養サポートチーム)に相談してその患者様に最適な栄養を検討します。そのような院内の様々な物的・人的資源を活用し、その患者様にとって最も適した医療をコーディネートするのが総合内科医の仕事ということになります。

話が前後しますが、米国の医学教育は、コミュニケーション技術に、日本より遥かにウエイトが置かれます。医学生は、いきなり本物の患者様に対応するのではなく、ロールプレイといった、模擬患者に接するところをマジックミラーの別室で指導教官が見ていますし、ビデオに撮り、後で一緒にディスカッションしながらフィードバックします。

このような教育を通して、医師は患者様に接する際に自己紹介から初め、更に患者様に納得していただけるコミュニケーション技術を身に付けていくのです。

さて、そうしますと一般内科とどこが違うかですが、患者様を、心をもった人間として、病の背景をも考慮に入れて診察・治療されているのであれば、何も変わらないのかもしれませんし、診断・治療だけであれば少し異なるのかもしれません。

残念ながら、私たちの日常診療では、UCSFのように初診お1人に45分もの時間をかけることは困難ですが、限られた時間内で可能な限り今まで述べてきた理想とする医療ができるよう努力したいと考えております。

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